NECの2017年度通期決算、パブリック部門の伸長で増収増益し、2018年度は減収減益の見込み

NECの2017年度通期決算、パブリック部門の伸長で増収増益し、2018年度は減収減益の見込み

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先日(2018年4月27日)、NECから2017年度通期決算(2017年4月1日~2018年3月31日)と2018年度通期予想が発表されましたので、概況を整理します。

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パブリックとその他の2事業部門が増収増益になったことなどにより、全体では増収増益となりました。

このパブリック事業部門の増収増益は、2017年1月に日本航空電子工業を連結子会社にした影響で上乗せがあったとしています。

そして、2018年度の通期決算予想は、売上高及び営業利益、純損益の全ての指標で減収減益を見込んでいます。

NECの2017年度通期(2017年4月1日~2018年3月31日)の決算概要は、以下の通りです。

売上高は、前年同期に対して1,794億円(6.7%)増の2兆8,444億円

営業損益は、同220億円増の639億円

純損益は、同186億円増の459億円

2018年度の通期決算予想は、売上高及び営業利益、純損益の全ての指標で減収減益を見込んでいます。

  • ・売上高:2兆8,300円、営業損益:500億円、純損益:250億円
  • ・営業損益では、NECエナジーデバイス株式の譲渡による100億円増を計画するものの、成長投資等で100億円、構造改革費用で400億円を見込んだことによるものです。

売上高、営業損益、純損益(2017年度通期累計)

売上高、営業損益及び純損益ともに、全指標増収増益となっています。

売上高は、前年同期に対して1,794億円(6.7%)増の2兆8,444億円

  • ・テレコムキャリアとシステムプラットフォームの2事業部門が減収となったものの、パブリックとその他の2事業部門が増収となり、全体では増収となっています。
  • ・なお海外売上比率は、26.0%(前年同期21.4%)となっています。

営業損益は、前年同期に対して220億円増の639億円

  • ・パブリックとその他の2事業部門が増益したことにより、全体では増益となっています。

純損益は、前年同期に対して186億円増の459億円

  • ・営業利益の増益などが寄与して、全体では増益となっています。

セグメント別(2017年4月1日~2018年3月31日)

セグメント別では、パブリックとその他の2事業部門が増収増益となり、エンタープライズが微増減益、システムプラットフォームが減収増益、テレコムキャリアが減収減益となっています。

パブリック事業

売上高:前年同期比22.6%増の9,391億円(営業損益:同213億円増の544億円)

  • ・売上高は、社会公共領域は指名停止の影響により減収したものの、社会基盤領域は日本航空電子工業の連結子会社化などにより増収し、全体では増収となっています。
  • ・営業損益は、売上が増加したことに加え、宇宙事業の採算性改善や前年の偶発損失引当金繰入等の減少により増益となっています。
エンタープライズ事業

売上高:前年同期比微増の4,087億円(営業損益:同40億円減の357億円)

  • ・売上高は、製造業及び流通・サービス業向けが減収したものの、金融機関向けで増収となり、全体では微増となっています。
  • ・営業損益は、IoT関連の投資費用の増加などにより減益となっています。
テレコムキャリア事業

売上高:前年同期比3.4%減の5,797億円(営業損益:同160億円減の20億円)

  • ・売上高は、海外においてTOMS(通信運用管理ソリューション)が増加したものの、モバイルバックホール(パソリンク)や海洋システムが減収したことに加え、国内の通信事業者の設備投資が低調に推移したことなどにより、全体では減収となっています。
  • ・営業損益は、売上が減少したことに加え、海外での構造改革費用の計上などにより、全体で減益となっています。
システムプラットフォーム事業

売上高:前年同期比0.8%減の7,143億円(営業損益:同18億円増の314億円)

  • ・売上高は、保守サービスの減少などにより、全体で減収となっています。
  • ・営業損益は、売上高の減収に加え、費用の効率化などにより、全体では増益となっています。
その他

売上高:前年同期比19.2%増の2,026億円(営業損益:同81億円改善の△119億円)

  • ・海外向けセーフティ事業やスマートエネルギー(電極、蓄電システム、ユーティリティ向けソリューションなど)の増加により、全体で増収となっています。
  • ・営業損益は、IoT基盤の投資費用増があったものの、海外事業とスマートエネルギー事業でに改善により、全体では増益となっています。

その他

親会社の所有者に帰属する持分は8,808億円(持分比率31.2%、2017年3月末比0.6ポイント悪化)

  • ・総資産:2017年3月末に対し1,374億円増の2兆8,214億円
  • ・負債:社債の発行を実施したことになどにより、同991億円増の1兆7,671億円
  • ・資本:親会社の所有者に帰属する当期利益を計上したことや、非支配持分が増加したことなどにより、同382億円増の1兆543億円

現金及び現金同等物の期末残高は、2017年3月末の2,400億円に対し1,061億円増の3,460億円

  • ・フリーキャッシュ・フローは、前年同期比168億円増の1,158億円
    営業活動によるキャッシュ・フロー:同375億円増の1,300億円
    投資活動によるキャッシュ・フロー:同207億円減の△142億円
  • ・財務活動によるキャッシュ・フローは、同416億円増の△72億円
米国で新しく設立したdotData社

AIの中核技術を切り出し、AIを使ったデータ分析プロセスを自動化するサービスを展開する企業で、2022年度の時価総額500億円を目指す。

本社は米国カリフォルニア州クパチーノに置き、CEOには1981年生まれの主席研究員で機械学習アルゴリズムの専門家が就任し、日本IBMでワトソン事業を育てた方もエグゼクティブディレクターとして参画

ベンチャーキャピタルの出資を受けて、将来的にIPO(株式公開)を目指し、上場時にはNECの子会社からも離れる見通しもある。

2018年度の通期決算予想

2018年度の通期決算予想は、売上高及び営業利益、純損益の全ての指標で減収減益を見込んでいます。

2018年1月30日に発表した「2020中期経営計画」の収益構造改革を実現するために、「2018年度は構造改革をやりきり、2019年度以降につながる成長の第一歩となる年としたい」としています。

  • ・売上高:2兆8,300円(対前年度:0.4%減)
  • ・営業損益:500億円(同:139億円減)
  • ・純損益:250億円(同:209億円減)
  • ・フリーキャッシュフロー:400億円(同:700億円減)

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なお、2018年度では、現セグメントの「テレコムキャリア」「システムプラットフォーム」「その他」の海外事業を切り出して、新設セグメント「グローバル事業」に移行しますが、以下は現セグメントでの予想です。

  • ・売上高は、パブリックとエンタープライズ及びその他の3事業部門で増収を見込んでいるものの、テレコムキャリアとシステムプラットフォームの減収をカバーできず、全体では減収となる見込みです。
  • ・営業損益は、2017年度の構造改革費用及び効果で200億円、NECエナジーデバイス株式の譲渡で100億円等で261億円の増益を見込むものの、成長投資等で100億円、構造改革費用で400億円を計画し、全体では減益となる見込みです。
  • ・純損益は、法人所得税費用の減少などを見込むものの、営業損益の減益と金融損益などにより、全体では減益となる見込みです。
  • ・なお、年間配当金は1株につき40円(中間配当金は1株につき0円)を予定(2017年度は60円)
    事業構造改革費用の織り込みなどにより、当期利益が減益となる見通しであることによる。

パブリック事業

  • ・売上高:前年度に対し1.2%増の9,500億円(営業利益:同96億円増の640億円)
  • ・売上高は、社会公共領域は連結子会社の売上減により減収を見込むものの、社会基盤領域は2020年オリンピック・パラリンピックを契機としたビジネス拡大などにより、全体では増収を見込んでいます。
  • ・営業利益は、2017年度に実施した構造改革の効果や不採算案件の抑制により増益を見込んでいます。

エンタープライズ事業

  • ・売上高:前年度に対し0.3%増の4,100億円(営業利益:同37億円減の320億円)
  • ・売上高は、流通・サービス業向けの増加により増収を見込んでいます。
  • ・営業利益は、システム構築サービスは増益を見込むものの、AI・IoT関連の投資費用の増加などにより、全体では減益を見込んでいます。

テレコムキャリア事業

  • ・売上高:前年度に対し2.5%減の5,650億円(営業利益:同100億円増の120億円)
  • ・売上高は、海外ソフトウェアが増加するものの、国内通信事業者での設備投資の抑制傾向が継続することにより、全体では減収を見込んでいます。
  • ・営業利益は、2017年度に実施した構造改革の効果などにより増益を見込んでいます。

システムプラットフォーム事業

  • ・売上高:前年度に対し3.4%減の6,900億円(営業利益:同14億円減の300億円)
  • ・売上高は、2017年度にあった大型案件の減少などにより減収を見込んでいます。
  • ・営業利益は、売上減に伴う減益を見込んでいます。

その他

  • ・売上高:前年度に対し6.1%増の2,150億円(営業利益:同269億円増の150億円)
  • ・売上高は、海外セーフティ事業の増加により増収を見込んでいます。
  • ・営業利益は、スマートエネルギー事業の改善、海外事業の採算性改善に加え、NECエナジーデバイス株式の譲渡などにより、増益を見込んでいます。
参考:新旧セグメントの予想対比

上段:売上高、中断:営業損益、下段:(営業利益率)

現セグメント新セグメント
2017年度実績2018年度予想2018年度予想
パフリック 9,391億円
544億円
(5.8%)
9,500億円
640億円
(6.7%)
パフリック 9,450億円
610億円
(6.4%)
エンタープライズ 4,087億円
357億円
(8.7%)
4,100億円
320億円
(7.8%)
エンタープライズ 4,050億円
320億円
(7.9%)
テレコムキャリア 5,797億円
20億円
(0.4%)
5,650億円
120億円
(2.1%)
ネットワーク
サービス
3,600億円
110億円
(3.0%)
システム
プラットフォーム
7,143億円
314億円
(4.4%)
6,900億円
300億円
(4.3%)
システム
プラットフォーム
5,100億円
320億円
(6.3%)
その他 2,026億円
△119億円
(-)
2,150億円
150億円
(7.0%)
その他 1,050億円
150億円
(14.3%)
グローバル 5,050億円
0億円
(-)
調整額
△478億円

△1,030億円
調整額
△1,010億円
2兆8,444億円
639億円
(2.2%)
2兆8,300億円
500億円
(1.8%)
2兆8,300億円
500億円
(1.8%)

現セグメントの「テレコムキャリア」「システムプラットフォーム」「その他」の以下事業を、新セグメントの「グローバル事業」に集約

  • ・テレコムキャリア:海外サービスプロバイダ向けSWサービス事業、ワイヤレスソリューション事業、海洋システム事業
  • ・システムプラットフォーム:ディスプレイ事業、海外向けUC事業
  • ・その他:グローバル事業、エネルギー事業

グローバルについては、「組織変更によって分散していた事業をグルーバルビジネスユニットに集結し、事業責任を執行役員副社長に集中させることで、スピーディーな事業成長実現する体制を作り、成長を実現する」として、これまでとは異なる姿勢でのビジネス開拓を進める計画です。

「2020中期経営計画」の進捗

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2018年1月30日発表の「2020中期経営計画」では、2020年度の目標は売上高が3兆円、営業利益を1,500億円(営業利益率5.0%)とし、取り組み状況は以下の通りです。

1.収益構造の改革

2019年度以降の利益改善に向け、構造改革費用400億円を2018年度計画に織り込み

  • ・間接部門、ハードウェア事業領域を対象に、国内3,000人の構造改革を想定
  • ・従業員リソースシフト関連費用、オフィスフロア効率化など
  • ・NECプラットフォームズの一関事業所、茨城事業所の生産機能の移管

2.テレコムキャリア事業の再編

2018年度のセグメント営業利益:120億円(国内:110億円、海外:10億円)
参考:2017年度 20億円(国内:180億円、海外:△160億円)

  • ・国内は、新「ネットワークサービスビジネスユニット」として5G事業機会への対応、多業種における収益最大化及びリソース最適化を推進
  • ・海外は、新「グローバルビジネスユニット」下でポートフォリオ見直し・構造改革を断行

3.課題事業への対応

  • ・モバイルバックホール
    事業改革プロジェクトを開始(黒字化が困難な場合、撤退も視野)
  • ・エネルギー(NECエネルギーソリューションズ)
    大型蓄電システム市場の立ち上がりに伴い売上増・損益改善を計画
    2018年度:売上高230億円、営業損益△10億円(2017年度:売上高90億円、営業損益△40億円)

4.成長の実現を担う取り組み・体制強化を実現

国内

  • ・2020年オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備
    生体認証・画像解析を用いたパブリックセーフティなど強みある領域での事業機会獲得
  • ・デジタルガバメント
    マイナンバーでの実績・経験を活かした市場創造と売上・利益最大化

グローバル:成長加速のための組織変更を実施

  • ・各セグメントに分散していた事業を「グローバルビジネスユニット」に集結
  • ・事業責任と権限の一元化による収益構造の立て直し
  • ・グローバル事業経験と実績を持つ外部人材をマネジメントに登用

5.変革を推し進め、実行力を高める施策を実施

事業開発力強化

  • ・最先端のAI技術の早期収益化に向けて米国にdotData社を設立

やり抜く組織:企業文化の抜本的な変革を図るため「カルチャー変革本部」を新設

  • ・外部のプロフェッショナル人材採用による人事改革・文化改革を断行する専任組織
  • ・時代と戦略に合った人事制度・報酬制度の導入
  • ・変革を促すためのコミュニケーションやオープンでカジュアルな風土の醸成

電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2018年4月27日発表)

日本電気 株式会社(2018年4月27日発表)

株式会社 日立製作所(2018年4月27日発表)

株式会社 東芝(2018年5月15日発表)

ソニー 株式会社(2018年4月27日発表)

パナソニック 株式会社(2018年5月10日発表)

三菱電機 株式会社(2018年4月27日発表)

シャープ 株式会社(2018年4月26日発表)

電機とITの決算

2018.5.21 2017年度通期決算:日立、東芝、三菱電機

2018.5.17 2017年度通期決算:ソニー、パナソニック、シャープ

2018.5.07 2017年度通期決算:富士通

2018.5.04 2017年度通期決算:NEC

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