書籍 OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法/クリスティーナ・ウォドキー(著)

書籍 OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法/クリスティーナ・ウォドキー(著)

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OKR(Objectives and Key Results)
シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法
Radical Focus
Achieving
Your Most Important Goals with Objectives and Key Results

クリスティーナ・ウォドキー(著)、及川 卓也(解説)、二木 夢子(翻訳)
出版社:日経BP社(2018/3/15)
Amazon.co.jp:OKR(Objectives and Key Results)

  • シリコンバレー式で、大胆な目標を達成する方法

    たった3カ月で、人もチームも生まれ変わる
    KPIよりやる気が出て生産性が圧倒的に上がる新しいフレームワーク

本書は、ウォドキー・コンサルティングのプリンシパルとして企業を洞察段階から実行段階に移行するためのトレーニングを行っている著者が、OKR(Objectives and Key Results)の導入・運営をわかりやすく解説した一冊です。

OKRとは、目標「O」(Objectives)と主な結果「KR」(Key Results)を設定するフレームワークで、グーグルをはじめシリコンバレーのスタートアップから大企業まで、多くの企業で採用されて結果を出しています。

目標を見つめ直し、その進捗を可視化するための実践的な手法が記述されていますので、経営トップや組織リーダー、さらには個人に至るまで、それぞれの目標達成に向けて取り組みを変化させる際のバイブルとなります。

本書は2部で構成されている他、付録「デザイン思考を使ったOKR設定ミーティングの進め方」には、ミーティングを進めていくうえでの留意事項とOKRワークシートがありますので、自身でOKRを運営していくうえで参考になります。

  • ・第1部では、業績が伸びず創業者同士や社員の不満が募っていたスタートアップ企業が、OKRを取り入れたことで社内全員が変わってくる様子を物語調で紹介されていますので、OKRの有効性を理解することができます。
  • ・第2部では、OKR設定やミーティングの開催方法及びスケジュール、活用のヒントなど、OKRアプローチ方法について詳細に解説されていますので、組織の規模や種類による導入・活用のヒントを見出すことができます。

スタートアップ企業はみんな金のリンゴでつまずく。

重要な会議で講演するチャンスが舞い込むかもしれない。
大口の顧客が自社のためだけにソフトウェアを改良してほしいと依頼してくるかもしれない。
あるいは、毒リンゴのような不良従業員がいて、経営者の足を引っ張るかもしれない。

スタートアップのライバルは時間だ。そして、時宣を得た実行のライバルは”脱線”だ。

適切なゴールを設定して、毎週ゴールを目指して仕事をし、目標達成するたびに祝えば、企業は一直線に成長する。

リンゴがどれだけ道に転がってこようと、問題にならない。

計画をやり遂げるための留意事項

1.ゴールに優先順位を付ける。

  • ・目標「O」(Objectives)を一つだけ設定する。
    現実を見ようとせず貪欲に何もかもやろうとするのではなく、どのゴールが最も重要かを見極めて選ぶ。
  • ・その目標を測定する主な結果「KR」(Key Results)を3つ設定する。

2.熱意を持って漏れなくゴールを伝える。

  • ・口頭で伝えるだけではなく、職場生活のあらゆる側面にリマインダーを織り込む。
  • ・ゴールに向けての進捗は、状況報告ミーティングと状況報告メールに織り込む。

3.やり遂げるための計画を策定する

  • ・意志力のみに頼るだけではなく、支援サービスに入る。
  • ・やるべき仕事に意味を持たせ、やる気が出ないときでも思い起こさせてくれるプロセスを取り入れる。

4.重要事項のために時間を空ける

  • ・目の前の仕事や緊急の仕事があれば対応してしまうため、重要事項をやり遂げるための時間をあらかじめ空けておく。
  • ・決めた締切に向かって仕事をするようにコミットして、責任感を生み出す。

5.諦めずに繰り返す

  • ・最初は失敗するものと覚悟し、定期的にフォローし、再挑戦をする。
    「失敗は、高い目標に向かって挑戦している」と、ポジティブに考える。
  • ・何が機能するかしないかを観察し、機能する点を増やし、機能しない点を減らし、学んでいく。

OKRの基本

目標「O」(Objectives)は定性的なものを一つだけ、主な結果「KR」(Key Results)は定量的なものを3つ決める。

目標「O」は四半期などの一定期間のゴールを定め、主な結果「KR」は期間の終わりに「O」を達成できたかどうかを判断するのに使う。

OKRは常にストレッチ・ゴールにしなければならないため、「目標を達成できる自信が半分しかない」という自信度を設定する。

会社がOKRを設定したら、各部門は会社のOKRに貢献する部門OKRを設定し、従業員一人ひとりも個人として成長するとともに会社のゴールに貢献する個人OKRを設定する。

毎週のチーム・ミーティングや毎週の状況報告メールに組み込み、値が上がったり下がったりした場合は理由を明確にする。

OKRは途中で変えず、フォーカスを維持する。

OKRは、各チームが会社の目標に沿っていることを確認するのに役立つし、それぞれのチームが企業全体にどのように貢献しているかを理解したり、チーム間の業務を調整したり、重複を避けたりすることに役立つ。

目標「O」(Objectives)

目標「O」はミッションに似て、志が高く、覚えやすいものにする。
ミッションとの重要な違いは期間で、目標「O」は1年あるいは四半期、ミッションは少なくとも5年間支えてくれるものでなければならない。

定量的で、人を鼓舞する内容にする。

時間的な縛りをつくる。

各チームが独立して実行できるようにする。

主な結果「KR」(Key Results)

主な結果「KR」では、感覚的な言葉を定量化する。
「どうやって『O』を満たしたとわかるか」というシンプルな問いを立てる。

一般的には3つの「KR」を定義し、基準は測れるものにする。

自分自身と自分のチームが、「大きいが不可能ではない仕事を成し遂げる」といった、後押しができるような最適点を探す。(失敗する確率が半々の場合が最適点)

OKRの実行を習慣にする

OKRをうまく運用するためには、コミットメントとお祝いのリズムをつくることが重要である。

チームはチェックイン・ミーティング(例えば毎週月曜)を行ってOKRの進捗をチェックし、会社の目標達成に向けたタスクにコミットメントする。

ミーティングでは、4つの四角形を使って状況を確認する。
その仕組みはできる限りシンプルにして、お互いに助け合うようなムードをつくる。

  • ・左上:今週の優先事項
    目標に向けてやるべき重要な仕事を3~4つ挙げ、OKRが達成できるかを話し合う。
  • ・左下:今後4週間 ― プロジェクト
    チームに知らせるべき今後の予定を記述し、メンバーが予定に貢献したり、準備したりするようにする。
  • ・右上:OKR自信度状況
    10段階の自信度10分の5(確率が半々)を設定し、その値の上下と変動理由について話し合う。
  • ・右下:健康/健全性指標
    守りたいこと、失ってはいけないものなどを2つ選定し、悪化度合いを把握して話し合う。

ゴール達成にどれだけ近づいたを確認するための金曜日のウィン・セッション(勝者のセッション)を開き、そこではチームが見せられるものを全て見せ合う。

そして、チームに対して、従業員同士に対して、全員の未来に対してコミットし、毎週コミットメントを新たにする。

OKR活用のヒント

1.複数の事業分野がない限り、会社のOKRは一つだけにする。

2.OKRには、3ヶ月の期間を設ける。

3.目標は人を鼓舞するためのものであるため、目標に指標を入れないようにする。

4.毎週のチェックイン・ミーティングは、会社のOKRで始め、次にグループOKRを取り上げる。
そこでは個人のOKRは扱わず、個人のOKRは個人面談で確認する。

5.OKRは連鎖する。
まず会社のOKR、次にグループのOKR、最後に個人のOKRを決める。

6.OKRの推進は、唯一実行しなければならない仕事である。

7.月曜日のOKRチェックインは会話の機会であるため、自信度の変化、健康・健全性、優先順位について話し合う。

8.OKRは単なるトップダウンではなくボトムアップの絶好の機会であるため、従業員に会社のOKRを提案してもらう。

9.OKRをイントラネットに載せるなどして、誰でも見れるようにする。

10.金曜日のお祝いは月曜日の憂鬱を癒す解毒剤になるため、活発な雰囲気を保つ。

ジンガ風のアプローチをシリコンバレーの若いスタートアップに持ち込んでわかったのは、こうした会社はミーティング全般への耐性が低く、ましてや詳しい分析を行う2時間のミーティングなどとんでもないということだった。

そこで、ミーティングをスリム化して、週に1回、会社と各チームのOKRの状況を話し合うだけにすると、うまくいった。

会社によっては、指数分析や営業ディスカッションでフォローする場合もあるが、まずゴールの確認から始めることで、ゴールの達成度合いに大きな違いが生まれる。

まとめ(私見)

本書は、OKRの設定から運営までのノウハウの他、成功の法則やよくある失敗例を紹介した一冊です。

このOKRは汎用的なツールで、企業の業種や役職を問わず導入できるだけでなく、個人の生活にも取り入れることができるようです。

但し、他のツールと同様に正解はなく、より効果が上がるような適用法を検討していくことが必要となります。

OKRは著者がソーシャルゲーム企業のジンガで初めて出会い、その考え方の大枠はピーター・ドラッカー氏が提唱した「目標管理(MBO:Managment by Objectives)」システムを、元インテルCEOのアンディ・グルーブ氏がインテルに導入する際に生まれたようです。

その後、スタートアップ企業に次々と広まり、グーグルに導入され、そして全面的に取り入れたジンガが活力を高め、リンクトインなどの成功も加わって、OKRは企業の成長を効果的に促進する存在になりました。

経営環境が激しく変わり、競合も激化している現在においては、企業内の全員が一丸となって対応していくことが必要となってきます。

その際、他のチームがやっていることを理解し、自分たちがやるべきことを明確にし、優先順位をつけて無駄を省き、結果を適時確認することで前向きに取り組めるような仕組みを運営することが必要となり、そのためには本書で紹介されているOKRが有効であると思いました。

  • ・人を鼓舞し、効果を測定できるようなゴールを設定する。
  • ・やることが他にどれだけあっても、自分とチームが常に望ましい最終形態に進むようにする。
  • ・チームのメンバーが目標を忘れず、かつ各メンバーが責任を自覚できるような習慣をつくり出す。

会社や上位組織のOKRを理解して自分のチームのOKRを立てるために、目標「O」(Objectives)を達成したかどうかを測る主な結果「KR」(Key Results)を設定する。

しかし、最初から正解は生まれないため、状況に応じて試行錯誤しながらOKR導入を進め定着させていくプロセスが企業力を強くしていくでしょうし、その取り組みが人と組織の発展や改革に必要な力(エンパワー)を強くしていくと思います。

なお、目標への理解と達成に向けた姿勢は、事業部門だけではなく他の部門をサポートする部門やスタッフ部門でも必要であり、それらの部門にもOKRは適用できる(適用すべき)と思います。

さらに本書では、例えば何かの勉強や健康維持などの個人的な目標に対する取り組みにもOKRが使えるとし、家族関係や夫婦関係の改善にも使えるとしています。

チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

目次

まえがき

イントロダクション

第1部 実行家の物語

創業の半年前

CEOのハンナ、上客をもう1社みつける

ハンナ、ピボットを提案する

エンジェルのジムに相談する

OKRを知る

チームにピボットを宣言

ハンナ、テイスティングに参加してキレる

大事なのは品質か、売り上げか

数字について話す

CEOへの不信感

悪い知らせ

再度エンジェルにアドバイスをもらう

エンジニアをクビにする?

契約打ち切りを伝える

時間切れ

さんたんたる結果

ハンナとジャック、CTO候補に会う

OKRをやり直す

目標に近づいた1カ月後の金曜日

めでたし、めでたし?

6カ月後、重要事項を達成

1年後

第2部 OKRのフレームワーク

なぜ、やり遂げることができないのか

プロダクト・チームのOKR

OKRの実行を習慣にする

OKR設定ミーティングを開催する方法

会社の目標をサービス部門のOKRを結びつける

OKRのスケジュール

MVPのためのOKR

OKRで毎週の状況報告メールを改善する

よくあるOKRの失敗例

OKRと年間レビュー

OKR活用のヒント

あとがきと謝辞

解説 及川卓也

付録 デザイン思考を使ったOKR設定ミーティングの進め方

参考

OBJECTIVES & KEY RESULTS(Coaching with Ben Lamorte)

eleganthack.com(Category: OKRs)

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