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2014/08/25

書籍 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です/カレン・フェラン(著)

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です
カレン・フェラン(著)、神崎 朗子(翻訳)
出版社:大和書房(2014/3/26)
Amazon.co.jp:申し訳ない、御社をつぶしたのは私です

 

20140819

コンサルタントは、こうして組織をぐちゃぐちゃにする
前代未聞!
気鋭のコンサルが内幕を暴露した全米騒然の問題作!
マッキンゼー、デトロイト・・・
コンサルの持ち込む理論もチャートも改革も、じつは何の意味もなかった

 

著者は、マサチューセッツ工科大学及び同大学院を卒業後、大手コンサルティングファームで、戦略、オペレーション、組織開発、IT分野のコンサルタントとして活躍し、その後大手企業のマネージャーを務め、現在はオペレーティング・プリンシパルズ社の共同設立者となり、経営コンサルタントとして活躍されています。

その著者が、コンサルタント時代に経験した様々なプロジェクト、そして一般企業に転職した際にコンサルティング手法のせいで苦労したエピソードなど、約30年のキャリア経験を綴った一冊です。

しかし、単なるコンサル批判ではなく、従来のコンサルティングの問題点を指摘した上で、コンサルティング業務の望ましいあり方、企業とコンサルタントとの正しい付き合い方を提示していることが特徴です。

本書は、以下の3つで構成されています。

  • ・最初の3つの章では、著者の大手コンサルティングファーム時代の経験から、「戦略開発」「業務プロセス改善」「業務管理指標の導入」につての功罪を詳しく解説しています。
  • ・次の4つの章では、「タレントマネジメント」と呼ばれるメソッドについて、「業績管理システム」「マネジメントモデル」「人材開発プログラム」「リーダーシップコンピテンシー」などを取り上げています。
    著者が事業会社に勤務していた間、コンサルタント時代に導入に携わった数々の経営手法のせいで、自らが苦労した経験を語っています。
  • ・最終章では「コンサル頼み」から抜け出す方法や「危険なコンサルタントの見抜き方」について、付録では従来のマネジメントの考え方に対する真偽、「科学的方法」を生かす4つのステップなど、著者の豊富な経験に基づいて提言しています。

私の提案は、役に立たない経営理論に頼るのはもうやめて、代わりにどうするかということだ。
ともかく大事なのは、モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きる。
対話や人間関係の改善がビジネスに利益をもたらすことを研究によって証明したわけではないが、真偽の判断は読者に委ねよう。

コンサルタントに依頼する側及びコンサルタントの方々だけでなく、経営理論の有効性に興味ある方々に、お薦めしたい一冊です。

定説となっている経営理論は本当に有効なのか、コンサルタントはどのように推進しているのか、導入した結果どうなったのか、実際に導入した会社に勤めてどんなに苦労したかなど、著者の経験に基づいて詳細に紐解いています。

そして著者が行き着いたのは、役に立たない経営理論に頼るのはやめて、対話や人間関係を改善することがビジネスにとって有効であるとしています。

  • ・コンサルティング案件の成功は、クライアンとコンサルタントの良好なパートナーシップの賜物であり、そのためには両者が協力しなければならないし、安心して良い関係を築けるようなコンサルタントを見つけることが必要である。
  • ・また、メソッドやベストプラクティスやソリューションを実行する前に、それを実行したらどのような影響が出るかについて事前に考えておく。
  • ・そして実行するには多くの不安が付きまとうが、周りにいる人たちと素晴らしいチームをつくっていければ道は開ける。

 

組織の役に立つかを判断する物差し

組織は、「個人」「サブグループ及びサブグループ同士の交流」「全体グループ」「全体グループとその外部の政界との交流」の4つの要素でできている。

新しいプログラムや取り組みが組織の役に立つか害になるかを判断する物差しは、以下の4つの内1つでも該当すればよい。

社員同士の交流を改善する

部門間の関係改善がうまくいけば、プロセスリエンジニアリングは成功する。

組織の階層を問わず、風通しのよい素直なコミュニケーションが行われるようになるほど、問題点や課題が早い段階で明らかになり、すみやかに解決されるようになる。

ビジネス上の問題の多くはコミュニケーション不足によるものであり、コンサルタントの価値は、異なる部門や階層をつなぐコミュニケーションの橋渡しとなることで発揮される。

判断力を強化する、または考え方を広げる

これまでより優れた情報や、より多くの洞察、より明確な報告が得られるなど、意思決定や判断力の強化に役立つような取り組みをする。

自分たちが実施しようとする取り組みを、思考の質を向上させるものにする。
ツールを使うだけで、考えることがおろそかになってはならない。

社員が生活を楽しめる環境をつくる

職場環境の完全や会社のイベントなど、社員が楽しく働ける場を提供するための取り組みをする。

会社が社員の生活向上を図るための取り組みは何であれ、顧客や地域社会や株主との関係改善につながる。

社員への投資が、収益や利益の増加などの会社の業績向上につながる。

顧客の生活を豊かにする

顧客を大切にする最良の方法は、社員を大切にすることである。

ただ金儲けが目的のビジネスではなく、お金を頂く価値のあるものを創り出すことである。

お金は成功の指標のひとつにすぎない。
お金は手段にしてもよいが、目的にしてはならない。

 

著者が指摘している「正しい理論と間違った理論」

間違った理論

業績給やインセンティブ報酬は、従業員をやる気にさせ、会社の目標に向かって努力させるのに役立つ。

数値目標や指標つきの目標は、従業員をやる気にさせ、業績の向上に役立つ。

年次業績考課、特に評価スコアをつけることは、従業員の業績向上に役立つ。

証明されていない理論

会社が成功するためには、優れた戦略が必要である。

リーダーになるためには、一定の特性を備えていなければならない。

正しい理論

人のマネジメントをうまく行うには、優れた対人スキルが必要である。

従業員のための投資を行う企業は、行わない企業に比べて業績がよい傾向にある。
(研修その他の人材開発や士気を高めるような活動への投資)

 

「科学的方法」を生かす4つのステップ

企業経営は科学ではないが科学から学べることもあり、参考となるのは理論そのものではなく真実を持ち引き出す科学的な手法である。

1:調査、分析、精査し、問題を定義する

問題を理解する。

問題をどのように定義するかによって、その後の全ての行動方針が決まってくる。

問題の根本的な原因を突きとめて、それを解決する。

2:調査結果にもとづいて仮説を立てる

解決法が簡単に見つからない場合は、仮説を立てることで考え方を広げることができる。

但し、早い段階で選択肢を絞り込まない。

調査結果にもとづいた仮説をいくつも立てる。

3:実験を行い、仮説を検証する

ある仮説を試してもうまくいかない場合は、さっさと次の仮説を試す。

ダメな点を、なるべく早いうちに洗い出す。

欠点を取り除くことによって、その後の手間を省く。

4:実験結果を見定め、結論を出し、ステップ3を繰り返す

科学的方法は反復のプロセスであり、実験をたったひとつ行っただけで結論を導き出すに足る十分な証拠が得られるとは考えにくい。

ひとつの実験から得られるのは「結論」ではなく情報、すなわち「実験結果」であり、さらにそこから突き詰めるべき点が見えてくる。

「相関性が高い」というフレーズは、まるで二つのデータが疑う余地のない因果関係で結ばれているかのように不用意に使われているが、たとえ二つのデータの相関性が高いように見えても、決定的とは言えない理由が偶然重なっただけの可能性もある。

 

実際、企業経営は科学ではないから「答え」などないし、ましてやビジネスの「ソリューション(正解)」など存在しない。
にもかかわらず経営理論は、多数の方法論やあらかじめ用意されてたソリューションでできており、成功への手順を支持するのだ。

ビジネスも生活と何ら変わらない。それどころか生活そのものだ。
健全なビジネスを営むために必要なものは、健康的な生活を送るために必要なものと同じなのだ。
流行の方法や「これさえやれば」の簡単なステップは、どちらに対しても効き目はない。

 

まとめ(私見)

著者は、最初コンサルタントとして多くの手法を推し進め、そして事業会社側に転職してその手法で苦労した経験から、定説とされる経営理論やフレームワークを否定しています。

私も著者と同様の経験をしており、全ての手法を否定するつもりはありませんが、根底にある「経営は人が行う」ことを忘れてはなりません。

表面的な戦略を策定しても、あるいはコンサルタントにつくってもらっても、実行するのは自分たちであり、結果の責任を負うのも自分たちです。

コンサルタントは客観的な意見やアドバイスをしてくれる存在ではありますが、あくまでも自分の会社のことを自分たち自身で議論して考え抜くことが重要と思っています。

その議論の手順や整理様式として、フレームワークを有効に活用すればよいのではないでしょうか。

 

本書に関係する情報

I'm Sorry I Broke Your Company
本書のサイト

The Truthometer
正しい理論、間違った理論のスコアカード

Karen G.Phelan
著者のサイト

Operating principals
著者が共同設立しているコンサルティング会社

 

本書と同様の指摘をしている主な書籍

書籍 本当に使える経営戦略・使えない経営戦略/山田 修(著)
2013年4月24日

書籍 世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア/入山 章栄(著)
2012年12月10日

書籍 戦略と実行 組織的コミュニケーションとは何か
2011年4月26日

 

 

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申し訳ない、御社をつぶしたのは私です
カレン・フェラン(著)、神崎 朗子(翻訳)
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