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2014/03/05

書籍 マクロウィキノミクス/ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ(著)

マクロウィキノミクス
ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ(著)、夏目 大(翻訳)
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン(2013/12/14)
Amazon.co.jp:マクロウィキノミクス

 

20140302

フラット化・オープン化・ネットワーク化する社会をいかに生きるか。

ウィキノミクス』(2007年)に続く新著
ミクロ経済とマクロ経済のように、ウィキノミクスは「マクロウィキノミクス」となった。

 

本書は、『ウィキノミクス』の著者らの新著で、ウィキノミクスとその中核を担う原理が、社会や構成するありとあらゆるものに適用されるようになっていることを多くの事例を交えて解き明かし、新たなビジネスモデル構築のための「原則」と「ルール」を提案しています。

本書には、金融経済や産業、教育・科学・医療、そしてメデァや公共における「新しい時代のビジネス原理」について、進行形の事例からから将来展望までを考察していますので、各分野に所属している方々、さらに社会構造全体の将来を俯瞰されたい方々にとって示唆に富んだ一冊となります。

前著が、階層型指揮命令系統の組織によって構成された旧来に対し、ウェブを通じた無数の人の協働(コラボレーション)によって成立する世界を示したのに対し、本書はウィキやブログ、SNSなどウィキノミクスを支えるツール活用によって、社会全体に影響を及ぼしてきているとしています。

例えば、政府のオープンプラットフォームを利用して市民が価値を創造したり、消費者がメーカーと直接にコラボレーションして新たな商品やサービスを創る。

あらゆるところにインターネットが浸透してきた現代においては、企業や公共機関及び地域社会だけではなく個人に至るまでが、多くの情報を入手し活用することができ、そして行動の痕跡をデジタル情報として至る所で残しています。

さらに、その範囲は様々な業種や業界に「ミクロからマクロに拡大している」として、これからの時代のビジネスモデル構築のためには「5つの原則」を取り入れることが必要であり、「成功させるための6つのルール」を提案しています。

 

ウィキノミクスの5つの原則

現在は、産業資本主義から、新しい原理と新しい考え方や行動に基づいた新らたなタイプの経済へと歴史的な移行を始めている。

知がつながる時代においては、従来のアプローチでは不十分で、場合によっては全く不適当であると思い知らされることになる。

新しい時代のビジネス原理は、安全で、豊かで、公正な世の中を維持していける社会を実現するための原則となる。

コラボレーション

これまでは、階層構造の組織でうまく運用されてきたが、世界の経済環境が複雑に絡み合う現在においては「負債」になりかねない。

誰もが参加できるフラットな仕組みを整えて、知恵、能力、資源を一カ所に集めた方が、一組織や一個人よりもはるかに大きなことを成し遂げることができる。

  • ・ネットワークに参加することを学んだ組織は、社内だけを対象に考えていた時と比べものにならないほど、多様な思考や才能を手にすることができる。
  • ・外部からのアイデアや人材を積極的に受け入れる組織は、内部の人材と能力だけに頼る従来のやり方に固守する組織をはるかに凌ぐ働きを見せる。
オープン

従来は、世間との情報共有に関して、ほとんどが「秘密主義を貫くのが当然」という態度であったが、デジタル時代の賢明な組織は「オープン」の意味を見直し始めている。

現在の組織には選択の余地はなく、世界は透明性を高めていく方向に進んでいる。

  • ・今では、消費者に商品やサービスの適正価格が伝わり、社員は会社の戦略や経営方針、抱えている問題などを知ることができる。
  • ・政府や医療機関においても、公的なデータを市民が閲覧・活用することができるようになってきている。
共有

企業や政府などの組織にとっての「オープン」が、利害関係者に適切な情報を開示することであるとすれば、「共有」は組織が保有する資産の開放や譲渡を意味する。

しかし、最近の様々な分野の事例では、知的財産を頑なに守ろうとすることが、かえって価値の創造を阻害することになると考える企業も増えてきている。

知的財産を誰もが自由に使えるということは、新しいビジネスチャンスが生まれるということであり、様々な課題に対する革新的かつ効果的な解決策を構築できる可能性を持っている。

保護すべき財産は保護し、共有すべき財産は共有する、バランスよく管理する。

そのためには、資源の共有に貢献し、かつ共有資源の利用、選定、改善を率先して行う優秀な人材も共有する必要がある。

倫理

複雑なネットワーク化時代の到来により、倫理観にのっとた行動や透明性を要求する声が世界でも高まっている。

「善い行いをしていればうまくいく」は、現実的なものとなりつつある。

  • ・透明性を求められている今の時代には、どんな組織もDNAに倫理を刻み込まなければならない。
  • ・誠意、思いやり、責任意識に透明性を加えることで、信用に値する倫理に基づく会社としての土台が完成する。

企業はもはや利益を追求するだけではなく、社会の一員として模範となる言動や、環境保護に奉仕する姿勢が求められている。

  • ・公的機関も民間組織も、自らが奉仕する社会に溶け込み、社会問題や環境問題に関心を示し、公共の利益拡大につながる実用的で有意義なソリューションを提供しなければならない。
相互依存

広大な商取引ネットワークや世界レベルで交流する中、人、金、技術、商品、サービス、文化、アイデアが、国境を越えていく時代では、相互依存は避けては通れない。

インターネットの登場により、社会を支える柱は「企業」「政府」「地域社会」に「市民」が加わることになる。

  • ・今の世界には、一国主義という考えが許される余地はない。
  • ・長期的に安定した世界をできる限り早く実現するためには、信用、透明性、コラボレーションが不可欠である。

 

ウィキノミクスを実現する6つのルール

1.クリエーターではなく、キュレーターを目指せ

  • ・何かを創造して守り抜くという、従来のやり方は捨てる。
  • ・製品やサービスなど、自分たちが創造したものを新たなプラットフォームに移行し、そこでは外部の人間も含めて新たな価値を付加できるようにする。

2.共有財の価値を見直す

  • ・コラボレーションを行うには、知的財産の一部を公開し、それを管理する法律の専門家を取締役会のメンバーに迎える。
  • ・公開によってメリットが生まれる分野とそうではない分野とを切り分ける。

3.自由にさせる

  • ・現代は何が起こるか予想がつかいため、将来にわたってコントロールするには状況に応じて様々な対応がとれるようにしておく。
  • ・そのためには、メンバーを自由にして、問題解決と新しいアイデアづくりを自主的に行うように仕向ける。

4.活動を担うヴァンガードを発掘し、強化する

  • ・自分で考えて行動できる組織であっても、ある程度の刺激は必要である。
  • ・コラボレーションにおいては、通常少人数の熱心なメンバーが先導することになるが、彼らにインセンティブを与え、長所を認め、才能ある人材を指導的立場に昇進させることでバックアップする。

5.コラボレーションの文化を創る

  • ・価値を創造していく過程で変革を継続させるためには、組織内のコラボレーション文化を強化し、根付かせる。
  • ・そのためには、アイデアや情報が自由に行き交うように、旧来の階層的組織構造から脱却して実力主義を確立する。

6.ネット世代に権限移譲する

  • ・現代の若者たちはデジタル社会に生まれ、その可能性を初めから理解しており、コラボレーションは当たり前である。
  • ・リーダーは、若者たちに権限を委譲して、彼らの力を引き出し、改革プロセスを推し進める。

 

まとめ(私見)

前著『ウィキノミクス』(2007年、日経BP社)で、私はその「頼もしい新たな知」のことを「マスコラボレーション」と呼び、人が自らの意志で他者とつながる「ソーシャル・ネットワーキング」が「ソーシャル・プロダクション」を実現する新たな方式として定着すれば、ティッピング・ポイント(臨界点)に到着し、商品やサービスの設計、製造、売買の仕方が地球規模で一変すると説いた。

それから4年が過ぎ、ウィキノミクス(ビジネスにおけるマスコラボレーションの技術と科学)は、ビジネスやテクノロジーのトレンドばかりか、社会全体に影響を及ぼし始めている。

本書は、様々な業界や業種で新たなビジネスモデルを構築している事例を詳細に紹介していますので、ボリュームがありますが、読みやすく翻訳もされています。

しかし原書は2010年であり、紹介されている事例も当時のものと思われます。

以降、国内外でも本書で言う「マクロウィキノミクス」に取り組んでいる事例もあり、本書で提案されている事との違いを検証する上でも、さらにその先を考える上でも参考になりました。

また本書の記述には、理想的あるいは現実的には難しい(かなり時間を要する)と個人的には思う部分もありましたが、本書内「マクロウィキノミクスを喜ばない人たちへの反論」でも努めて答えている事項にも、ある程度理解できます。

イノベーションと金融サービス、科学と大学、エネルギーと輸送手段、政府の本分と民主主義など、マクロウィキノミクスが社会や企業及び個人をどのように変えていくのか、その中で構築すべき新たなビジネスモデルを考えるきっかけとなる一冊でした。

 

オープンと守秘、自由と管理、社会貢献と利益追求、企業にとっても働くメンバーにとっても永遠のテーマです。

インターネットが普及し、あらゆる情報が瞬時に隅々まで伝わる現代においては、旧来の概念で構築されてきた仕組みを見直す必要があることは確かです。

集合知を活用すれば今までにない新たな商品やサービスを生み出すことができ、一方悪意を持った者の行動も全体で監視すれば抑制できることも、概念としては理解できます。

しかし、そのような社会や企業になっていくためには、その中の生活者や社員の倫理観が必要であり、ビジョン・活力・コミュニケーション能力を備えたリーダーの存在が欠かせないのは、過去も今も今後も変わらないと思います。

 

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マクロウィキノミクス
ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ、夏目 大
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