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2012/12/19

ⅩⅡ.経営学は本当に役に立つのか

20130111_11

世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄(著)
出版社:英治出版(2012/11/13)
Amazon.co.jp:世界の経営学者はいま何を考えているのか

 

 

ⅩⅡ.経営学は本当に役に立つのか

「科学的でありながら役に立つ」ものにするための新たな試み

本書最終の二つの章では、「経営学は本当に役に立つのか」と問いかけ、「科学的でありながら役に立つ」ものにするための新たな試みも紹介されています。

  • ・「知的におもしろい経営理論」を生み出すのではなく、事実を積み上げることを目的とした「エビデンス・ベースド・マネジメント」や「メタ・アナリシス」という手法。
  • ・さらに「ガウシアン統計分析」で外れ値になってしまう企業を分析するための手法として、「ケース・スタディー」「ベイズ統計」「複雑系の応用(ベキ法則)」の可能性。

 

なお、今回で書籍のまとめは最後となりました。
そこで、日頃感じている事を後半に記述します。

本書によれば、経営学は他の学問に比べ発展途上のようですが、「そもそも経営が学問となりうるのか?」という疑問もあります。
そして、経営に関わる人たち、

  • ・大学やビジネススクールの教授は、「研究者」それとも「教育者」のどちらであるべきなのか?
  • ・経営コンサルタントは、経営学をどのように理解し、支援していくべきなのか?
  • ・企業のトップ及び社員は、どのようにして理論を実践に応用していくべきなのか?

現在、私には答えはありませんし、これからも考え続けていかなければならないテーマだと思っています。

 

経営学の課題

1.経営学者の理論への偏重が、理論の乱立を引き起こしている。
2.「おもしろい」理論への偏重が、重要な経営の事実・法則を分析することを妨げている。
3.平均にもとづく統計手法では、独創的な経営手法で成功している企業を分析できない可能性が残る。

 

事実を積み上げることを目的とした手法

1.エビデンス・ベースド・マネジメント

多くの実証研究で確認された経営法則、「定型化された事実法則」を企業経営の実践に応用しようという考えで、理論的な説明を重視いていない。

2.メタ・アナリシス

企業データを使う従来の分析手法とは異なり、これまで蓄積されてきた研究成果そのものをデータとして統計分析して、その法則が正しいかを検証する方法。

 

「ガウシアン統計分析」で外れ値になってしまう企業を分析するための手法

3.ケース・スタディー

企業の内状を定性的に深く分析する。

4.ベイズ統計

サンプル全体の平均的な傾向ではなく、観測対象となっている企業一つ一つのパラメーターを確率的にとらえる手法

5.複雑系の応用(ベキ法則)

(1)「そもそも事象には安定した平均は存在せず、まれにとても端的なケースが生じうる」ということを最初から組み込んだ考え。

(2)業界で1位を獲得した回数を分析
トーマス・パウエル教授(2003年)

業界ごとにごく一部の特定企業だけが何回も1位をとる。

 

まとめ

私も、企業の経営戦略の策定をお手伝いしています。
その際には、著名なフレームワークを活用してしますが、その多くは古来から、また欧米から入ってきたものです。

そして企業の企画部門の方々も、それらを多用して大量の資料を作成されているのをしばしば見受けます。

一方では、古い著名な経営理論を語り、フレームワークに当てはめ、分厚い資料を作るだけのコンサルタントも見受けます。

経営は、アートか?、サイエンスか?

経営は生き物!

過去のデータを統計分析・分類して得られた理論が、日々変わる経営環境の中で役立つものなのか?

私の中で、ずっと以前からある「悩み」です。

私もビジネススクールで様々な理論を学びましたが、「学問と実務に隔たりがある」と感じた時もありました。

主査を担当して頂いた教授は、「学問としての探求と実務での応用」そして「実務から学問へのフィードバック」の重要性も教えて頂き、現在実務に近い私としては非常に感謝しています。

経営学者の役割は、可能なかぎり科学的に経営の知を発展させ、そこで得られた成果を通じて実社会へ還元することにある。

経営学者と経営コンサルタント・実務家とは目指している方向性は違いますが、

  • ・経営学で明らかにされた経営における現象と影響の仕組みやロジックを、
  • ・環境の異なる個別企業にどのように応用していくかをコンサルティング・実践する。

ということでは、つながっていると考えています。

経営学を学び、その知識を持ったリーダーが、都度遭遇する場面で臨機応変に応用して決断・実践する。

企業経営においては、中長期的な戦略を考える場合と、日々起こる事象に対して決断をする場合とは視点は違ってきますが、経済学や社会学に比べるとまだ発展途上の経営学も学問として研究するとともに、実務で応用できるよう今後も努力していきたいと考えています。

 

更新

本書には直接は関係しませんが、
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長、システムデザイン・マネジメント研究科付属システムデザイン・マネジメント研究所長を兼任されている前野隆司氏のブログに、「現在の日本の大学の問題点」を指摘されています。

一読をお薦めします。

前野隆司氏のブログ
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科委員長、システムデザイン・マネジメント研究科付属システムデザイン・マネジメント研究所長兼任

2 いま、大学の何が問題なのか?(その1)

特集「『SDM学』の本の原稿」の目次

 

参考

2012.12.10 書籍 世界の経営学者はいま何を考えているのか(当ブログ)

 

20130111_12

世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄(著)
出版社:英治出版(2012/11/13)
Amazon.co.jp:世界の経営学者はいま何を考えているのか

 

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