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2012/12/15

Ⅷ.不確実性の時代の事業計画、経営戦略理論のひとつ「リアル・オプション」

20130111_3

世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄(著)
出版社:英治出版(2012/11/13)
Amazon.co.jp:世界の経営学者はいま何を考えているのか

 

 

Ⅷ.不確実性の時代の事業計画、経営戦略理論のひとつ「リアル・オプション」

  • ・経営学では、将来の見通しがはっきりしないことを「不確実性(Uncertainty)」という。
  • ・経営戦略論には、「コンテンツ派」と「プランニング派」があるが、今は「コンテンツ派」の独壇場となっている。
    また、「プランニング派」は、「計画主義」と「学習主義」に集約できる。
  • ・「リアル・オプション」の事業計画は、「プランニング派」の計画主義と学習主義の架け橋となるかもしれない。
    今現在も研究が進められているフロンティアの分野であり、実践的で有効な事業計画法が今後考案されるかもしれない。

 

1.「コンテンツ派」と「プランニング派」

(1)1970年代までは「プランニング派」が大きな地位を占めていたが、以降決定的なプランニング法を生みだせなかったため、今は「コンテンツ派」の独壇場となっている。

  • コンテンツ派
    「企業はどのような戦略をとるべきか」という、戦略の中身の研究(代表:マイケル・ポーター教授)
  • プランニング派
    「どのようなやり方で戦略や事業計画を立てるべきなのか」という、計画の立て方を研究(代表:イゴール・アンゾフ教授)

(2)2つに集約される「プランニング派」の考え方

  • 計画主義(代表:イゴール・アンゾフ教授)
    綿密な計画を立て、その結果をフォードバックして新たな計画に反映するプロセスを繰り返すことが効果的である。
  • 学習主義(代表:ジェームス・クイン教授、ヘンリー・ミンツバーグ教授)
    不確実性の時代には、計画主義は通用しない。
    不確実性の高い時代には、事業の目的や計画は実際に事業を進めていくうちに形成されてくる。
2.ファイナンス分野から派生してきた「リアル・オプション」の事業計画法

(1)ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法

  • ①その事業が将来生み出すキャッシュフローの合計が、一時と定常費用などのコストを合計してもプラスになるかを評価する手法。
  • ②事業環境の将来予想が評価に大きく影響するため、不確実性の高い事業では困難である。

(2)リアル・オプション

  • ①不確実性の高いことをチャンスと捉え、事業の評価や計画に「段階的な投資」を考えるため、望ましくない市場変化が起こった場合はリスクを抑えることができ、望ましい環境が実現した場合は機会を取り逃がさないですむ。
  • ②また、その事業環境について学習することができ、不確実性を下げることにも役立つ。
  • ③不確実性が高いほど、その事業のオプション価値は高くなり、事業を計画する時には「段階的な投資と不確実性の関係」を明示的に取り入れた事業評価を行うことが重要である。

※コーポレート・ファイナンスでの事業オプション価値の代表的な計算:ブラック・ショールズ公式

(3)合併事業は「将来の合併相手の事業買収のオプション」
ブルース・コグート教授(1991年)
不確実性の高い市場に進出するときは単独資本や現地企業の完全買収によって進出するのではなく、合併や部分出資で進出して段階的に追加買収する手法の方が、リスクを減らしつつ潜在的なチャンスを逃さない。

(4)EVA(経済付加価値)を応用して「企業のオプション価値」を計算
ジェフリー・ロイヤー教授とトニー・トン教授(2008年)
国際的な合併事業を多く持つ企業の方が、オプション価値が高くなる。

(5)事業計画のあり方を提唱
リタ・マクグラス教授とイアン・マクミラン教授
不確実性の高い事業環境では、事前に不確実性を洗い出し、仮説は仮説として常に意識し、それを恒常的にチェックするために、事業計画は行うものである。

(6)不確実性を「内生的」「外生的」に区別することの重要性を提言
イリヤ・カイパース教授とザビエル・マルティン教授
合併企業の出資比率は外生的な不確実性を受けやすく、他方で内生的な不確実性には影響を受けない。

  • ①内生的な不確実性:企業自ら行動を起こせば低下させることのできる不確実性
  • ②外生的な不確実性:企業がコントロールできない不確実性
3.リアル・オプションの事業計画の主なステップ

(1)可能な限り全ての不確実性を洗い出す。

(2)不確実性を「外生的」と「内生的」に仕分ける。

(3)重要な「外生的な不確実性」について、「楽観」と「悲観」の両ケースを想定し、それぞれの戦略オプションを検討する。

(4)両ケースの事業の収益性を評価する。

(5)それぞれの不確実性を定常的に確認し、不確実性の低下状況、次に選択すべき戦略オプションを検討する。

 

参考

2012.12.10 書籍 世界の経営学者はいま何を考えているのか(当ブログ)

 

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世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄(著)
出版社:英治出版(2012/11/13)
Amazon.co.jp:世界の経営学者はいま何を考えているのか

 

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