クラウドのサプライヤーになる。中堅中小ベンダーが採るべき戦略
IT業界にとってのクラウド事業
特定のクラウドサービスを再販しサポートする戦略です。
大手ベンダーや競争力あるアプリケーションを持つベンダーはクラウド事業者(プロバイダー)を志向できるのに対し、他の中堅中小ベンダーが採るべき戦略と考えます。
「特定業務で競争力あるクラウドサービス」のサプライヤーになることもありですが、幅広い(又は数種類の特定した)業務のクラウドサービスの中から、ユーザー企業の代行者として最適なサービスを選定し、運用までを支援するサービスを展開していくべきです。
- ・信頼性要件が比較的緩やかな業務は「パブリッククラウド」
- ・機密性の高い業務は「プライベートクラウド」や企業内システム
を適用するなど、目的に合わせた「ハイブリッド」的な利用形態を支援することになります。
そのためには、
- ・ユーザー企業の特性や課題を熟知した「全体最適を考慮したIT化構想の実現」
- ・「クラウドとクラウド」や「クラウドと企業内システム」の連携を検証した「効率的なIT投資の支援」ができるノウハウが必要になってきます。
現状では、クラウドはまだ発展期の初期段階で、今後ユーザー企業が本当の意味で利用しやすい環境が整備されていくはずです。
- ・各サービスのサービスレベルも様々で、指標の共通化はこれからである。
- ・HaaS(IaaS)部分の使用策定やセキュリティ確保方法などについて、複数の団体で進められている。
クラウドサービスを選択する上でも、クラウドサービスと連携する上でも、これらの動向を押さえてユーザー企業を支援することが必要です。
また、クラウド構築用の製品を提供するビジネスもあります。
HaaSというインフラ基盤のレベルは困難かもしれませんが、PaaSのアプリケーション基盤やSaaSのアプリケーションのレベルであれば、クラウド構築用製品の開発は可能です。
いづれにしても、特に大手ベンダーなどの協力(下請け)ベンダーとして活動してきた中堅中小ベンダーは、この時期を機会ととらえて新たな戦略を展開できれば、IT業界で生き残れる可能性はあります。
パブリッククラウドの主なサービスレベル
IaaS Amazon EC2 :稼働率 99.95%/年 = 停止時間 約4.4時間/年
PaaS Windows Azure:稼働率 99.95%/月
SaaS Google Apps :稼働率 99.90%/月
国内ベンダーが目指している稼働率 99.99%/年 以上(停止約1時間以内)
→海外ベンダーには価格で勝てない国内ベンダーの活路となるか?
総務省や経産省が求めているサービスレベル
確保されている帯域やセキュリティレベル
データセンターのバックアップやリストア、障害通知や回復時間
プライバシー保護や監査可能性などの評価要件
特に海外ベンダーの大部分が稼働率だけのサービスレベルのみに対し、幅広い項目のサービスレベルや評価基準の標準化を求めています。
総務省「スマート・クラウド研究会の中間とりまとめ案」
経産省「クラウド・コンピューティング社会の基盤に関する研究会」
主な標準化団体
OGF:Open Grid Forum
- ・標準化対象:Iaasの標準化。
- ・エンドユーザ(プライベートクラウド)とパブリッククラウド間のインターフェース
・主参加企業:米マイクロソフト、米オラクル、米サンマイクロ、米インテルなど
DMTF:Distributed Management Task Force
- ・標準化対象:Iaasの標準化。管理部分の標準かも視野に入れた、クラウド間のインターフェース
- ・主参加企業:米AMD、米シスコ、米HP、米IBM、米マイクロソフト、米サンマイクロ、富士通、日立など
SNIA:Storage Networking Industry Association
- ・標準化対象:Iaasの標準化。
- ・クラウド内のサーバーとストレージ間のインターフェース
- ・主参加企業:米シスコ、米HP、米IBM、米マイクロソフト、米サンマイクロ、米シマンテック、日立データシステムズなど
CSA:Cloud Security Aliance
- ・標準化対象:セキュリティ確保の方式
- ・主参加企業:米シスコ、米HP、米マイクロソフト、米サンマイクロ、米シマンテック、米シスコ、米マカフィー、米グーグルなど
≫ 選択2:クラウドのサプライヤーになる。
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